
堂園 禅
うーん、最近の世の中、ちょっとしんどいなぁ。ねぇ、和田先生。

和田 湊
ん? なんじゃ、禅よ。いつになく浮かない顔をしておるのう。まさか、また恋ボウズでも食らったか?

堂園 禅
あはは、違いますよ。もっと大きな、世界という名の水槽の話ですよ。ほら、最近報道されてた沖ノ島実験海域での深海探査機転覆事故のこと、聞かはりました?

堂園 禅
あのニュース、なんか心に波紋を広げますよね。不安な時代、不機嫌な人々って言うけど、まさにそういうドロドロした感情が、水槽の底に溜まってるように感じて。特に、自然の摂理と人間の営みが交錯するような場所での出来事だから、和田先生の意見を聞きたいなぁって。

和田 湊
なるほど、沖ノ島の事故じゃな。ふむ、あの件か。

和田 湊
わしは常々言っておるが、自然との駆け引きは、道具への敬意と、状況判断の的確さがあって初めて成り立つものじゃ。あの事故、報道を見る限り、どちらも欠けていたのではないかと思うのじゃ。

堂園 禅
道具への敬意…か。確かに、探査機にしても、観測船にしても、そこには人の意図や願いが込められてるはずなのに、それがぶつかり合うなんて、しんどい愛だなぁ。

和田 湊
「カイリュー」とやらも、観測船も、それぞれが己の目的を果たすための「道具」。じゃが、それを操る人間の心が荒んでおれば、道具もその荒波に飲まれる。まるで、巻き心地の悪いリールで無理やり大物を引き上げようとして、結局ラインブレイクするようなものじゃ。

堂園 禅
巻き心地、ですか。和田先生のリールへの愛は、本当に深いですよね。でも、この水槽全体で見れば、スムーズな巻き心地って、社会の調和のことなんやろなぁ。それが失われて、ギシギシと軋む音が聞こえるようですよ。

和田 湊
うむ。そして、自然は甘くない。海は常に予測不能な揺らぎを秘めておる。それを理解せず、己の主張ばかりを振りかざして無理をすれば、必ず手痛いしっぺ返しを食らう。ボウズじゃ。いや、それどころか、命まで奪われる。

堂園 禅
揺らぎ、ね。僕の世界観と繋がるなぁ。水槽の揺らぎは、生命の源であり、変化の象徴。でも、それが暴力的な波となってしまうのは、そこに癒やしや相互理解の愛が足りないからなんじゃないかな。皆、自分の正義を振り回して、相手の揺らぎを認められない。

和田 湊
その愛とやらも、自然界では弱肉強食の摂理の上に成り立っておる。だが、人間社会では、その摂理を捻じ曲げようとする傲慢さが、かえって混乱を招く。道具への無知、自然への軽視。そして、何よりも相手の存在を認めない愚かさじゃ。

堂園 禅
愚かさ…。そう言われると、しんどいけど、納得できる部分もありますね。世界という水槽が、感情のヘドロで濁りきってるような。この濁りをどうやって浄化するんやろ。僕は、もっと透明で、穏やかな水槽で泳ぎたいなぁ。

和田 湊
浄化か…容易ではない。しかし、我々がすべきは、まずは己の道具を研ぎ澄ますこと。そして、自然の声を聴き、その流れに逆らわぬことじゃ。無理にねじ伏せようとすれば、必ず破綻する。それがフィッシュ!の極意じゃ。

堂園 禅
フィッシュ!の極意…。なるほど、それは調和の美しさにも通じますね。どちらか一方だけが勝つのではなく、自然という大きな流れの中で、共に生きる術を見出す。それが、この苛立ちの根源にある、喪失感に対する答えなのかもしれないなぁ。

和田 湊
全くじゃ。しかし、この話を聞いて、わしはふと、学内の「美意識の湖」でのあの事件を思い出したのじゃ。

堂園 禅
あぁ!「美意識の湖」ですか!あの芸術祭での「インスタレーション・ボート転覆事件」ですね!

堂園 禅
あの時も、「美しい作品を作りたい」という純粋な愛と、「多くの人に見てもらいたい」という熱い想いが、安全管理という現実的な視点を忘れさせてしまって…。結果的に、「美意識」が「悲劇」を生んでしまった。今回の沖ノ島の話と、根っこは同じなのかもしれないなぁ。

和田 湊
うむ。学生たちは「表現」に夢中になり、その道具たるボートの強度や、湖という自然の力を軽視した。まさに、巻き心地の悪いリールで大物を狙った結果じゃ。あの時も、わしは「ボウズじゃ!」と叫んだものじゃ。

堂園 禅
あの事件以来、「美意識の湖」のほとりには、「揺らぎを愛し、調和を尊べ」というモニュメントが建ちましたよね。今回の沖ノ島事故も、もしかしたら、僕たち人間に何か大切なメッセージを伝えようとしているのかもしれない。この水槽が、もっと美しく、穏やかになるためのヒントを。

和田 湊
そうじゃな。自然は常に、我々に教えを与えてくれる。それを素直に受け止められるかどうか。それが、これからの時代を生き抜く「釣り人」たる我々の、真の腕の見せ所じゃ。…さて、わしはそろそろ「美意識の湖」で、最新のリールの試し巻きをしてくるかのう。

堂園 禅
あはは、お気をつけて。きっと、湖の揺らぎが、先生に新たなインスピレーションを与えてくれますよ。僕も、もう少しこの水槽の透明度について考えてみようかな。


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